不倫慰謝料を請求されたら減額交渉はできる?減額交渉の方法やポイントを解説

突然の不倫慰謝料の請求にどのように対処すべきかお悩みではありませんか?
不倫慰謝料の金額は数十万円~数百万円にわたる金額で請求されることが多いため、どうにか減額交渉したいと考える方も多いでしょう。
 
そこで今回は、不倫慰謝料の減額交渉について解説します。
減額交渉する方法や、交渉のポイントについて紹介するので、これから減額交渉を検討している方は参考にしてください。
 

不倫慰謝料請求をされたら減額交渉をすることはできるのか?

 
不倫の慰謝料を請求され、慰謝料金額を見て「高すぎて妥当ではない」「支払うことができない」と考える方もいるでしょう。
不倫慰謝料を請求された場合、慰謝料を減額するように相手と交渉をすることは可能なのでしょうか?
 

1.不倫における慰謝料とは

 
不倫は法律上では「不貞行為」と呼ばれ、不法行為に該当します。
不法行為は他人の権利や利益を違法に侵害する行為であり、その行為を行った場合には被害者に損害を賠償する義務があることが民法709条に定められています。
 
夫婦には婚姻共同生活の平和を維持する権利や、法的保護に値する利益があります。
不貞行為はこれらの権利や利益を侵害する行為のため、慰謝料として損害を賠償する義務が発生するのです。
不貞行為を行えば配偶者だけではなく、相手が既婚者であれば相手の配偶者からも慰謝料を請求去れる可能性があります。
 

2.裁判所からの請求以外ならば減額交渉ができる

 
不倫慰謝料の請求が行われる方法は、3つのパターンが考えられます。
被害者(配偶者、相手の配偶者)が自分で行っているパターンと、弁護士が代理人として行っているパターンと、裁判所から請求が行われているパターンです。
 
被害者自身が請求を行っている場合や、弁護士が代理人として請求を行っている場合であれば減額交渉は可能です。
しかし、裁判所から慰謝料請求に関する訴状が届いた場合、裁判で慰謝料が決定されるため減額交渉を行うことはできません。
 

慰謝料の減額交渉をする前に確認すべきこと

 
慰謝料請求は書面で行われることが多いですが、口頭やメールなどで行われることもあります。
慰謝料請求された場合にはその場ですぐに減額交渉を始めるのではなく、次のことを確認するようにしましょう。
 

1.慰謝料の支払い義務の有無

 
減額交渉をする前に、まずは慰謝料の支払い義務が本当にあるのか確認しましょう。
不倫の慰謝料請求で慰謝料の支払い義務が生じるケースは次の場合です。
 

①不貞行為が成立する場合

 
不貞行為とは、配偶者以外と肉体関係を持つことです。
つまり、肉体関係のない関係であれば不貞行為は成立しないため、慰謝料が発生することはありません。
 
連絡を取っていただけの場合や、デートなど食事をしていた、手を繋ぐなどのスキンシップをしただけでは不貞行為とは認められません。
 

②夫婦関係が破綻していない場合

 
不倫の慰謝料が発生するのは、夫婦関係が破綻していない場合です。
前述したように夫婦には法律で守られている権利や利益があり、不貞行為はその権利や利益を侵害する行為として賠償責任が発生します。
しかし、不貞行為を行った時にはすでに夫婦関係が破綻していたような場合は守られるべき権利や利益は存在しないと考えられるため、慰謝料の支払い義務は生じません。
 

③故意や過失があった場合

 
不法行為は故意や過失があった場合に賠償責任が生じます。
不倫においては、相手が既婚者と分かっていて肉体関係を持った場合(故意)や、よく考えれば既婚者であることが分かったような場合(過失)に慰謝料の支払い義務が発生します。
また、相手に独身だと偽って肉体関係を持った場合には、「貞操権の侵害」として慰謝料の支払い義務が生じます。
 

2.慰謝料請求の根拠の有無

 
慰謝料請求を受けた場合、相手が慰謝料請求を行っている根拠を確認しましょう。
不倫の基準は人によって違うため、法律上の不貞行為ではないものの自分の基準で「不倫」だと判断して慰謝料請求が行われている場合があります。
 
また、証拠はないものの推測で慰謝料を請求している場合もあるでしょう。
相手がどのような根拠を持って慰謝料請求をしているのか確認し、不貞行為の事実があったのであれば慰謝料を支払う必要があります。
 
慰謝料の証拠として認められるものは、相手と肉体関係があったことを客観的に立証できるような証拠になります。
ホテルに出入りしている写真や肉体関係があることが分かるメッセージ内容、旅行のレシートなどが証拠として挙げられます。
 

3.慰謝料金額の妥当性

 
慰謝料の減額交渉を行う前に、金額の妥当性について検討する必要があります。
不倫慰謝料の金額は法律で定められていないため、相手の言い値で請求が行われています。
 
そのため、相場金額よりも高額な場合もあれば、低い金額の場合もあります。
高額ならば減額交渉を行う必要があります、低い金額ならば減額交渉をしても大幅な減額は難しい可能性があります。
 

慰謝料金額の相場と減額できる要件

 
慰謝料とは精神的苦痛に対する損害賠償なので、明確な金額を法律で定めることは難しくなっています。
 
そのため、裁判では過去の判例や総合的な状況から金額が決定されます。
不倫慰謝料の減額交渉にあたり、慰謝料の相場金額や減額の要件について知っておきましょう。
 

1.慰謝料金額の相場とは

 
不倫の慰謝料は前述した通り、法律で金額が明確に定められているわけではありません。
しかし、裁判の過去の判例から慰謝料金額は50~300万円が相場とされています。
 
相場金額には大きな開きがありますが、これは不倫や婚姻生活の状況がケースバイケースだからです。
不倫の悪質性が高い場合や、婚姻生活が長い場合には慰謝料金額が高額になります。
 

2.慰謝料が減額される要件

 
不倫の慰謝料は状況を総合的に判断して決められるものです。
慰謝料が減額される要件には次のものが挙げられます。
 

①交際期間が短い、性行為の回数が少ない

 
交際期間が1~3カ月など短い場合には、精神的苦痛が少ないと判断されるため慰謝料が減額される傾向にあります。
また、性行為の回数が5回未満など少ない場合も減額の対象になります。
 

②婚姻期間が短い

 
婚姻期間が半年や1年など短い場合には、婚姻期間が長い夫婦ほど大きな苦痛にはならないと判断されるため慰謝料が減額される傾向にあります。
また、婚姻期間が短ければ離婚をしても再スタートしやすいと判断されることも減額に繋がる要因です。
 

③不倫に積極的ではなかった

 
不倫を行うことに対して積極的ではなかった場合には慰謝料が減額されることもあります。
相手が積極的に誘ってきたことで不倫関係が始まった場合は減額できる可能性があります。
モラハラやパワハラによって断り切れずに不倫関係になってしまった場合であれば、減額ではなく被害者として慰謝料の支払い義務がないと判断されるケースもあるでしょう。
 

④反省を示している

 
不倫が発覚してからの態度も慰謝料金額を決める判断材料の1つになります。
不倫したことに対して反省をし、謝罪などを行っていれば慰謝料は減額される可能性があります。
 
一方で、不倫していたにも関わらず不倫を否定して証拠を隠そうとした場合や、謝罪をしなかった場合は悪質性が高いと判断されて慰謝料が増額されると考えられます。
 

3.経済的に余裕がない場合にも減額されやすい

 
不倫の慰謝料が減額される要因は不倫状況や夫婦関係だけではなく、経済状況も考慮される場合があります。
経済的に余裕がない場合であれば、高額な慰謝料を請求したとしても支払うことができません。
慰謝料は一括払いが基本なので、経済的に余裕がない場合であれば現実的に支払える金額まで減額される可能性があります。
 
慰謝料を当事者間で決める場合であれば分割払いに相手が合意すれば分割で払っていくことも可能ですが、分割払いは最後まで支払われない可能性があるので請求者にとってリスクが高く、懸念される傾向にあります。
そのため、経済的に余裕がないことを主張すれば減額されやすいと考えられます。
 

慰謝料の減額交渉の流れ

 
慰謝料の減額交渉を行うのであれば、どのような流れで減額交渉が進むのか知っておきたいものです。
慰謝料請求の書面が手元に届いてから合意に至るまでの流れを見ていきましょう。
 

1.請求内容の確認

慰謝料請求は内容証明郵便で書面によって送られてくることが多くなっています。
届いた書面の内容をしっかり確認するようにしましょう。
確認する内容は次の通りです。
 

  • 請求者
  • 慰謝料請求の根拠
  • 慰謝料金額
  • 回答書の返信期限

 
根拠のない慰謝料であれば減額交渉することができる可能性がありますし、慰謝料金額の内容によっても減額交渉を検討できます。
 

2.回答書の作成・送付

 
慰謝料請求内容を確認したら、できるだけ早めに回答書を作成して送付します。
弁護士に相談している場合であれば、回答書は弁護士に任せることができます。
ご自身で作成する場合には、不倫への謝罪や反省の意思、減額したい理由を記載しましょう。
回答書は相手に届いたことが確認できるように内容証明郵便を利用して送付することをおすすめします。
 

3.減額交渉

 
回答書を送付すれば、相手から合意の有無の連絡が来ます。
互いに合意ができない場合には交渉が行われることになるため、ここから慰謝料の減額交渉が始まります。
 
慰謝料が相場よりも高い場合には減額交渉を行うことになりますが、金額の妥当性を証明するための根拠を探しておくことが大切です。
根拠があれば相手が納得する可能性がありますし、裁判になっても証拠として提出することができます。
また、慰謝料の支払い義務が生じない場合には、慰謝料の支払い義務がないことを主張しましょう。
 

4.示談書の作成

 
減額交渉で双方が合意に至れば、最後に示談書を作成します。
示談書は慰謝料について合意したことを証拠ととして残すための重要な書面です。
 
請求者には慰謝料の支払い拒否や不履行を防ぐための証拠になり、請求された側にはこれ以上慰謝料請求をされないように防ぐための書面になります。
示談書は請求者が作成することが多いので、示談書が届いたら内容を確認してサインをします。
 

慰謝料の減額交渉におけるポイント

 
慰謝料の減額交渉を行うことは初めてだという方が大半でしょう。
パニックや焦った状態で対応してしまうと、トラブルが大きくなってしまう可能性があります。
冷静さを保ちながら次のことに注意して減額交渉を行いましょう。
 

1.話し合いで感情的にならない

 
当事者同士で減額交渉を行う際には、感情的になってしまうケースも珍しくありません。
請求者が怒りや悲しみなどで感情的になって話し合いにならないようなケースもあれば、請求された側が逆切れやパニックを起こしてしまうケースもあります。
 
双方が感情的になってしまえば話し合いは進まず、状況が悪化してしまうこともあるでしょう。
そのため、相手が感情的になったとしても、冷静に心を落ち着けて対応することが大切です。
 

2.示談書にすぐサインをしない

 
減額交渉で話がまとまれば示談書が送付されますが、すぐにサインはせずに必ず内容をしっかり確認するようにしましょう。
 
自分にとって不利な内容が書かれている場合もあれば、合意内容に相違があったことで示談内容にズレが生じている場合もあります。
示談書にサインしてしまえば後から訂正することは難しいため、しっかり確認することが大切です。
 

3.弁護士に相談する

 
当事者同士で減額交渉を行えば感情的になって話し合いが進まないことも多いですが、弁護士に相談すればスムーズに交渉が進みやすくなります。
また、相場を大幅に超えるような慰謝料を支払うようなことを防ぎ、ご自身で減額交渉するよりも大幅に減額できる可能性が高まります。
合意書の作成や確認などの手続きも対応してもらうことができ、もし裁判になってもそのまま弁護士に任せることができます。
 

まとめ

 
今回は不倫慰謝料の減額交渉について解説しました。
 
不倫の慰謝料を請求された場合、パニックになれば誤った対応をしてしまう可能性があるため、まずは落ち着いて請求内容を確認することが大切です。
そして、そのまま請求内容は無視せずに回答書を作成するようにしましょう。
 
不倫慰謝料の対応はご自身で行うことは知識や労力が必要になり、精神的にも負担が大きくなります。
まずは専門家である弁護士に相談し、今後の対応や交渉についてアドバイスを受けることをおすすめします。

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