不貞行為の慰謝料の二重取りは可能か?リスクや注意点も解説

配偶者が不貞行為をした場合、精神的な苦痛を受けた分を慰謝料として請求することができます。
配偶者と離婚するのであれば、配偶者と不倫相手のどちらにも慰謝料をしたいと考える方もいるでしょう。
不貞行為の慰謝料は二重取りすることは可能なのでしょうか?
今回は不貞行為の慰謝料の二重取りや、二重取りのリスクや注意点について解説します。

不貞行為とは

「不貞行為」とは、一般的に「不倫」と呼ばれるものです。
配偶者がいるにも関わらず、配偶者以外の異性と肉体関係を持つことを「不貞行為」と呼びます。
不倫というと、どのような行動や行為が不倫と線引きするのかという考えに個人差が出てくるものです。
法律上では基本的に、配偶者以外と肉体関係を結ぶ行為を「不貞行為」として位置付けています。
ただし、肉体関係がなくても不倫相手との関係が深く、婚姻生活を破綻させる原因になった場合には不貞行為であると判断された判例も過去にあります。

不貞行為が発覚した場合にできること

配偶者が不貞行為をしていることが発覚した場合、どのようなことができるのでしょうか?
法律上で行うことができる不貞行為への対応を見ていきましょう。

1.離婚請求ができる

配偶者の不貞行為が発覚した場合、離婚請求を行うことができます。
離婚は大きく分けると「協議離婚」と「裁判離婚」の2種類があります。
協議離婚は話し合いによって離婚をする方法で、双方の合意が得られれば離婚する理由は関係なく離婚を成立させることができます。
一方で、裁判離婚の場合には、法定離婚事由と呼ばれる離婚の原因が必要です。
法定離婚事由は民法第770条に定められており、不貞行為も離婚事由として挙げられています。
そのため、相手が離婚を拒否していたとしても、不貞行為が事実であれば裁判によって離婚することができます。

2.慰謝料請求ができる

不貞行為が行われた場合、「不法行為」として慰謝料請求を行うことができます。
不法行為とは故意や過失によって相手に損害を与える行為を指し、民法709条には損害に対して賠償する責任を負うことが定められています。
不貞行為は法律上で守られるべき夫婦の権利を侵害する不法行為であり、損害賠償として慰謝料を請求することができるのです。

3.慰謝料請求は当事者二人に請求可能

不貞行為による慰謝料請求は、不貞行為を行った当事者二人に請求することができます。
不貞行為は一人で行うものではなく、当事者二人で共同して行う「共同不法行為」です。
民法719条に定められている「共同不法行為責任」に該当し、連帯して責任を負うことになります。
そのため、不貞行為を行った配偶者と不倫相手の二人に慰謝料請求ができるのです。
ただし、不貞行為の発覚で離婚しない場合には、配偶者に慰謝料を請求しても同じ家計から支払われることになるため、配偶者への慰謝料請求を行わないケースが多くなっています。

不貞行為の慰謝料請求で二重取りはできるのか?

不貞行為は共同不法行為なので、当事者二人に慰謝料を請求することができます。
しかし、それぞれに適正な慰謝料を請求することと、「二重取り」は異なるものです。
慰謝料の二重取りとはどのようなことを指し、二重取りを行うことは可能なのか見ていきましょう。

1.慰謝料の二重取りとは

慰謝料の二重取りとは、慰謝料の満額を配偶者と不倫相手のどちらにも請求することを指します。
例えば、不貞行為の慰謝料金額が200万円のケースだった場合、本来であれば共同責任なので配偶者と不倫相手にそれぞれに請求を行い、合計して慰謝料金額が200万円になるようにします。
それぞれに100万円ずつ請求してもいいですし、配偶者が50万円で不倫相手に150万円を請求しても問題ありません。
しかし、二重取りの場合には、配偶者と不倫相手にそれぞれ200万円ずつ請求することを指します。

2.基本的に慰謝料の二重取りはできない

不倫をした当事者二人に慰謝料を請求するという点では二重取りできると言えますが、それぞれに請求することで慰謝料相場の倍額を受け取るということはできません。
不貞行為による賠償を支払う義務はそれぞれが負うのではなく、不貞行為の当事者双方が連帯して責任を負うことになります。
そのため、それぞれに慰謝料を請求することで倍額を受け取ることは基本的に認められません。

 

3.裁判所を通さない交渉の場合は二重取りもできる

不貞行為の慰謝料の二重取りをすることは基本的にはできませんが、裁判所を通さない場合には二重取りができる場合もあります。
慰謝料請求をいきなり裁判で行うケースもありますが、多くは裁判前に慰謝料の金額や支払いなどについて交渉を行います。
交渉であれば慰謝料金額を自由に設定することができ、相手が合意すれば支払いを受けることができます。
ただし、不倫をした当事者同士がそれぞれ慰謝料を支払っていることを知らないケースでしか成立しないと言えます。

不貞行為の慰謝料を二重取りする場合のリスクと注意点

不貞行為の慰謝料は二重取りが絶対にできないというわけではなく、二重取りができるケースも存在します。
しかし、二重取りをする場合にはリスクや注意点があります。
どのようなリスクや注意点があるのか事前に理解しておきましょう。

1.裁判上では認められない

不貞行為に対してできる限り高額な慰謝料を請求したいと考え、裁判で配偶者と不倫相手それぞれに慰謝料請求をする方もいるでしょう。
配偶者と不倫相手のそれぞれに慰謝料請求することはできますが、裁判で請求すれば二重取りが認められることはありません。
裁判で慰謝料が300万円と認められたとすれば、二重取りにならないように配偶者と不倫相手の慰謝料支払い額が合計で300万円になるように分配されることになります。
そのため、裁判でそれぞれに慰謝料請求を行っても、倍額受け取ることは実現しないと言えます。

2.求償権を行使される可能性がある

配偶者と不倫相手に同時に慰謝料請求を行わず、不倫相手だけに先に慰謝料請求を行うような場合も多いでしょう。
この場合、「求償権」に注意しなければなりません。
共同不法行為の当事者同士には連帯責任が生じますが、負担割合というものがあります。
仮に不倫相手だけが慰謝料の全額を支払った場合、不倫相手の負担割合を超えた金額は、支払っていない不法行為者(配偶者)に請求することができるのです。
例えば、不倫相手が慰謝料100万円全額を浮気された配偶者に支払った場合、不法行為の責任割合が同じ場合には、本来であれば不倫相手の賠償責任の金額は50万円ということなります。
そのため、不倫相手が求償権を行使することで共同責任を負う配偶者に対して50万円の支払いを請求することができ、配偶者は不倫相手に50万円を支払わなければなりません。
こうした求償権によるトラブルを予防するには、一方だけに慰謝料請求を行う場合に求償権の行使を防ぐ必要があります。
示談書に求償権の放棄について記載して合意を得られれば、示談が成立した時点で相手は求償権を行使することができなくなります。

適切な慰謝料請求を行うために確認しておくべきこと

不貞行為が事実であれば、できる限り高額な慰謝料を請求したいと考えることは当然と言えます。
しかし、二重取りなどは後からトラブルになってしまう恐れもあります。
適切に慰謝料請求を行うためにも、慰謝料請求を行う前に次のことを確認しておきましょう。

1.不貞行為の成立の有無

「配偶者が不倫をした」とご自身の基準で考えていても、法的には不貞行為と認められないケースの場合もあります。
そのため、不貞行為の疑いがある場合には、法律上の不貞行為が成立しているのか確認しましょう。
不貞行為の基準は、肉体関係の有無です。
メッセージのやり取りやデート、キスなどのスキンシップだけでは不貞行為にはなりません。
不倫相手と肉体関係があったのかどうか調べる必要があります。
ただし、配偶者や不倫相手に直接問いただしても、正直に話すとは限りません。
証拠を隠滅する恐れもあるため、直接問いただす前に証拠集めをすべきです。

2.不貞行為の証拠

不貞行為で慰謝料請求や離婚する場合には、不貞行為の証拠が必要になります。
証拠がなければ相手が不貞行為を否定する可能性がありますし、裁判をする場合には証拠が必須になります。
不貞行為の証拠とは、不倫相手と肉体関係があったことを立証できるものを指します。
性行為をしたことが分かる写真や動画、ホテルに出入りしている写真、ホテルのレシート、性行為に関するメッセージ内容などが挙げられます。
決定的な証拠がない場合でも、デートで利用したレストランや旅行のレシートや通話履歴、メッセージのやり取りなどを組み合わせることで有力な証拠になることもあります。

3.慰謝料金額の相場

不貞行為の慰謝料金額は、法律で細かく定められているわけではありません。
そのため、請求者の言い値で慰謝料は請求できます。
しかし、慰謝料金額には相場があるため、相場からかけ離れた金額を請求しても相手の合意が得られない可能性があります。
相手の合意を得ることや、請求する慰謝料の金額を設定するためにも慰謝料金額の相場は知っておくべきです。
慰謝料金額の相場は50~200万円と言われています。
相場金額に大きな幅がある理由は、夫婦の関係や不倫の状況など総合的に判断して裁判では慰謝料金額を定めるからです。
自身の場合にはどれくらいの慰謝料金額が相場になるのか詳しく知りたい場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、過去の判例と状況を考慮した上で慰謝料金額の相場を算出することができます。

4.不倫相手の情報

不倫相手に慰謝料を請求するのであれば、不倫相手の個人情報が必要です。
メールや電話でも慰謝料請求を行うことはできますが、相手が無視することや着信拒否などして逃れようとする恐れがあります。
そのため、一般的には誰にいつどのような書面を送ったのか公的に証明することができる「内容証明郵便」を使って慰謝料請求を行います。
内容証明郵便や裁判で請求する場合には、相手の名前と住所が必要です。
住所が分からない場合でも、相手の勤務先が分かっている場合には勤務先に送付することもできます。
また、住所や勤務先が分からないものの電話番号が分かっている場合には、弁護士に依頼して電話番号から住所を割り出すことも可能です。
相手の情報が全く分からないものの配偶者と不貞行為を継続しているような場合には、興信所や探偵を利用して相手を調べることを検討しましょう。

不貞行為の慰謝料請求を行う方法

不貞行為の証拠や相手の情報など慰謝料請求を行う準備が整ったら、配偶者や不倫相手、もしくは双方に慰謝料請求を行います。
慰謝料請求を行う方法は、大きく分けると3種類あります。
それぞれの請求方法のメリットやデメリットを検討し、ご自身に合った請求方法を選んでください。

1.当事者同士の交渉

不貞行為の慰謝料請求は、当事者同士の話し合いで行うことが可能です。
証拠を集めて相手に内容証明郵便で慰謝料請求を行います。
相手から連絡があれば、慰謝料金額や支払い方法、示談するための条件などについて交渉を行い、合意に至れば示談書を作成します。
文字だけで見れば簡単そうに見えますが、当事者間で行う慰謝料請求はスムーズに進むことが少ないと言えます。
相手が慰謝料請求に応じないこともあれば、感情的になって話し合いが進まないこともあります。
また、慰謝料の相場を知らないことや、法的な知識がないため、相場よりも低い金額の慰謝料で合意してしまうケースもあるでしょう。

2.弁護士を代理人に立てた交渉

当事者間で行う交渉はスムーズに進まないため、弁護士に依頼して交渉を行う方法もあります。
弁護士が第三者として介入することで話し合いはスムーズに進みやすくなります。
相手の顔を見ることや、直接連絡する必要がなくなるため、精神的なストレスも軽減されるでしょう。
しかも、法的な知識や交渉力で慰謝料の増額も期待できます。
また、不貞行為が発覚してから早い段階で相談すれば、証拠集めのアドバイスや、内容証明郵便の送付などの手続きも全て任せられます。
ただし、弁護士に依頼すると費用が発生するため、最初の相談の際に見積もりを出してもらって検討するようにしましょう。

3.裁判による慰謝料請求

交渉で合意に至らない場合には、裁判で請求を行います。
裁判を行うには、裁判所に証拠や申立書を提出する必要があり、法的な知識が必要にあります。
自力で裁判を行うこともできますが、弁護士に依頼することで手続きや裁判所への出廷なども全て任せることが可能です。
裁判で慰謝料請求を行えば、過去の判例や状況の総合判断から慰謝料が確定します。
裁判所の判決を無視して相手が慰謝料を支払わない場合、強制執行により相手の財産を差し押さえられるというメリットがあります。

まとめ

今回は不貞行為の慰謝料の二重取りについて解説しました。
二重取りは基本的に行うことはできないですが、少しでも高額な慰謝料を請求したいと考える場合には弁護士に相談しましょう。
不貞行為の慰謝料問題を一人で解決することは、非常に精神的な負担が大きいものとなります。
弁護士に依頼することで負担を軽減することができ、相場よりも高額な慰謝料請求も期待できます。

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